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2011/05/06

洋上阿房自動車

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今年のゴールデンウィークには、青森~岩手をドライブする予定を立てていた。
しかし震災が起こり、予定は中止となった。
もちろん道路等の交通事情にもよるのだが、僕はあのような惨状のなかドライブをして、楽しめる自信がなかったからである。
自粛した、というのとは違う。
今ではむしろ被災地の経済活動を活発にして復興につなげよう、という動きになっているが、僕は被災地の復興のために旅行に出かけるのではない。
被災地のためには他の形で微力を提供させていただくとして、あくまでも僕の旅行は僕の楽しみのためだけに行う。

目を西に向け、地図を眺めていると、新潟から敦賀へ繋がる航路が目に停まった。
日程に比較的余裕がある今年のGW、船旅なんかいいではないか。
というわけで、フェリーに乗り西に向かうことにした。

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船に乗ったのはこれまでにも数えるほどしかない。
新潟~佐渡、鹿児島~屋久島、宮崎~大阪の3回だ。
電車、自動車とも違う高揚感のある船旅。
気合が入る。
気合が入りすぎて、出航の90分前には港につき、時間をもてあます。

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出航時刻の1時間以上も前に、苫小牧を前日に出航したフェリーしらかばが、お尻をこちらに向け入港してきた。
さすがに大きな船である。
デッキの上では乗客が港を見下ろし、港では作業員たちがそれぞれの持ち場についてフェリーの入港を見守る。
地方航路とはいえ、港には独特の厳かな雰囲気が漂っている。

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出航に先駆け、クルマを乗船レーンに異動させる。
このフェリーはGW前日の平日午後の便だったため、乗り込むクルマは想像していたよりもずっと少ない。
わがMINIは先頭から3台目、ボルボの老夫婦の後ろにつける。
フェリーから次々とトラックが降りてきてはまた入ってゆく。
まるで巣から忙しそうに出入りして働くアリのようだ。
それをワクワクしながら眺めているうちに、自分たちが入っていく番になった。
ドキドキしながら船内に侵入してゆく。

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車両甲板は広く、窮屈さはまるでない。
内心、ぎゅうぎゅうに詰め込まれて、クルマとクルマが揺れてぶつかったらどうしよう、などとあり得ない心配もしていたのだが、杞憂に過ぎなかった。

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雰囲気はさながら立体駐車場のなか。
入り口を探し、船内へ。
わがMINIとしては、イギリスで作られて日本へ運ばれてくるときに続いて2度目の船旅となる。

さて、今回は1等個室を奮発したので、快適である。
部屋には我が家にはないテレビなんてものがあるし、窓からは右舷側の外を眺めることもできる。
甲板に出てみるも、風が強く、寒い。
船は大きく、海面からの高さも相当あるので、振り落とされるんじゃないかと怖くなる。
出発前のイメージとしては、優雅に甲板から佐渡に沈む夕日を眺める光景を想像していたのだが、実際にはゴーゴービュービューザバザバザブンで、そんな優雅な感じはまるでない。
空も曇り、夕陽も見ることはできない。
部屋のテレビでは通常のテレビも見られるのだが、船会社のプロモーションチャンネルでは、延々豪華客船での海外クルーズのドキュメントを流しており、それを断続的に3周くらい視聴してしまった僕は、おかげさまで日本海の洋上にいながらカリブ海クルーズを満喫することができた。
長いと思われた12時間の航海も、乗船し、船内を探検し、食事をし、風呂に入ればあっという間。
何より敦賀着が早朝5:30なので、早く寝ないと翌日が辛くなる。

夜中に外を眺めると、遠くの洋上に光が見える。
島だろうか。
それにしては等間隔にたくさん並んでいる。
漁船か。
見下ろせば、船の明かりが照らし出す足元の白波だけがはっきりと見える。
早朝4:00起床。
出発前のイメージとしては、デッキに出て、朝日を見ながら敦賀入港を見守る、などといった優雅な朝を想像していたのだが、あれこれ支度をしているうちにどんどん敦賀は近づき、館内放送も早めに支度をしてクルマのところへ行きなさいと急きたてる。
またしてもイメージ通りにはゆかない。

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Leica D-LUX3

荷物をまとめて部屋を出て、クルマに戻ってしまえば、あとはするっと船を降りるだけ。
船長以下クルーに見守られてデッキをしずしずと降りる、なんて情緒的なセレモニーもなにもない。
クルマたちはペッと船に吐き出されるようにお尻から出され、出されたクルマたちは散り散りに去ってゆく。
12時間沈むことなく乗せてくれた船を見返す暇もない。

吐き出された敦賀港は暗く、予報に反して雨だった。
洋上阿房自動車と銘打ってはみたものの、家を出るときにリセットしたクルマの距離計は、たったの12.7kmを指している。
朝ごはんを食べようと思っていた気比の松原も雨に煙り、クルマを降りる気にもならない。

僕はなぜか船のなかに忘れ物をしてきたような気持ちのまま、急きたてられるようにクルマを西に向けて走らせるほかなかった。

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