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2011/03/27

独逸阿房列車 本編7(後半)

前回の運行から早1年以上が過ぎた。旅行からは1年半が経ってしまっている。
僕は朧気になった線路をふわふわと辿りながら、独逸阿房列車を運行していかなくてはならない。
始発から終着まで通しでご乗車になるお客さまはいないだろうが、列車は途中で運転打ち切りという訳にはいかないのだ。

平成21年9月24日(続き)。

予定より遅れて夕方のブリュッセル南駅に降り立った我々は、帰りの列車の指定券を取ろうと、切符売り場を探す。
混み合った構内でようやく切符売り場を探し、窓口の列に並ぶ。
窓口の係員はおばちゃんだ。
ICEのパンフを手に取り、この便の指定券をブリュッセル南駅からフランクフルトまで取りたい、と僕は片言の英語で伝える。
するとおばちゃんは意外なことを口にした。
「その必要はない」
指定席がある列車で指定券を取りたいと言っているのに、その必要はないとは何事か。
耳を疑ったが、確かに「@:\%>,:;ドントハフト~:+?><m」と言っている。
僕は再び同じ内容を伝える。
僕にはそんなに表現の幅はないから、おばちゃんは、また同じこといってるわ、仕方のない外人ね、と思ったかもしれない。
だが僕も間違ったことは言っていない。この列車の指定券は存在し、僕は対価を払ってそれを購入しようとしているだけなのだ。
おばちゃんは、パンフの「始発:ブリュッセル南駅」のところに蛍光ペンでぐるぐると印をつけながら、再び説明を始めた。
さっきよりも語気が荒いように思える。
どうやらおばちゃんは「この列車はここブリュッセル南駅が始発である。始発なのだから、指定席を取る必要がどこにあろうか(いや、ない)」ということを言っているらしかった。
理屈はわからなくもない。
しかし、それだって座れる保証などどこにもないから、僕は予め指定しようというのだ。
おばちゃんの頑なな対応に僕は、こんな得体の知れない東洋人に1等車の指定券なんて売れないわ!なんて思っているんじゃないのか、と考えた。
「ば、バット…」
うまく指定券の必要性を訴えようとしたが、悔しいことに言葉が出てこないし、おばちゃんはもはや聞く耳を持っていない。
後ろには他のお客さんが並んで待っている。
僕は仕方なく明日出直すことに決め、「お、OK、I see」と言うのがやっとだった。
僕がそう言うと、おばちゃんは初めてニコリとし、「メルシー」と言った。
その笑顔の裏に、僕はとても冷たいものを見たような気がしたが、僕の気のせいだったかもしれない。
とにかくこの一件で、僕のベルギーに対する第一印象は悪いものとなった。
公用語がフランス語というのも気に食わない。気取りやがって。

立腹しながら駅を後にし、今度はブリュッセルでの数泊の宿泊先となる、妻の伯父さんの家を探さなければならない。
伯父さんはここブリュッセルで日本料理のレストランを経営している。
場所はEU本部のすぐ近く。
道がわからず人に訊ねながら、なんとかレストランに辿りついた。
遠い異国の地での日本人、ましてや縁者というのは心強い。
ビールで喉をうるおし、すぐ近くのマンションに案内される。
ここがブリュッセルでの拠点となる。

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M6 /Planar T*50mmF2 /DNP CENTURIA400 /ブリュッセル市街

ビルの8階あたりの伯父さんの家の窓からは、ブリュッセルの市街が一望できる。
印象の悪いブリュッセルだが、ベンガラ色の連なる家々の眺めには心躍る。
視線を落とせば、いい感じの路地裏が。

84160003_640
M6 /Planar T*50mmF2 /DNP CENTURIA400 /ブリュッセル市街

薄暗い中にきれいな色のminiがちょこんと佇む。

夕飯はありがたいことに、伯父さんのレストランでとらせていただく。
初対面の伯父さん達を前にやや緊張しつつも、久しぶりに食べるスシはうまかった。
寝床に入り、僕はほっとしつつも、明日、駅の窓口で何と言ってやろうか、どう指定券の必要性を喝破してやろうか、こっちの表現よりこっちの方がいいかな、などと英作文のテストに取り組むように、頭の中のペラペラの英和辞典を一所懸命めくっていた。

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