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2010/01/25

独逸阿房列車 本編5(前半)

平成21年9月22日。

さわやかな晴れた朝、ザルツブルク中央駅へ向かう。
今日は比較的長距離を移動しなければならない。
この後、ミュンヘンを経由し、フランクフルトの南方にあるハイデルベルクを目指す。
移動距離はおおよそ500km程だろうか。

移動手段は相変わらず鉄道だが、また来るときと同じように、またRailjetやICEを乗り継いで行くのは、速く快適ではあるが、面白みに欠ける。
ここはあえて、ザルツブルクからハイデルベルクまで、乗り換えなしでECに乗ろうと思う。
ECとはEurocityの略で、国際長距離列車などと呼ばれる。
ICEを新幹線とするならば、ECは在来線の特急といった風情(速度はもっと速いが)で、車両もICEに比べるとどこか垢抜けない。
だが、それがいいのだ。
長距離を移動するならば、「のぞみ」よりも「白鳥」に乗りたいではないか。
まぁ、この辺の例えはわかってもらえる人だけにわかってもらうとして、とにかくECに乗るのだ。
実は既に座席指定券をニュルンベルクで買ってある。

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万事予定なしを旨とする独逸阿房列車ではあるが、比較的長距離で、ここは座れないと辛いな、という区間はやむを得ず指定券をとる。
百閒先生もふと特別急行に乗ろうとして空席がなく、東京駅でよく駄々をこねていたようだが、僕はその辺りに関しては用意がいいのだ。
それらしき列車がホームに入ってきて乗り込む。
車内はこれまでのICEなどに比べると古臭く、座席も布張りである。
ICEであれば電光掲示されているはずの指定席サインもなく、日本の車両のように座席番号が貼り付けられているのみである。
しかもその番号が二種類貼ってあり、微妙にずれた座席番号を示している。
車内は空いていて、席を間違ったところで問題はなさそうだが、それでは落ち着かないので、近くにいたビジネスマン風の青年に指定券を見せながら訊いてみる。
「この列車でよいか、この座席でよいか」
「よい。正しい列車に乗っている。窓に貼られた番号は誤りであり、古いものである。上部に示された番号が正しい番号である」
「あなたに感謝する」

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D-LUX3 /ザルツブルク~ハイデルベルク EC内から

車内は空いているし、暖かい。
車内での時間はたっぷりあるし、だいぶ気持ちに余裕も出てきた。
フランクフルトの本屋で買っておいた鉄道地図をバッグから取り出す。
小さな駅名まで書かれた地図で、地形もよくわかる。
ドイツの国土を俯瞰でき、今自分たちがどのあたりを移動しているのかがよくわかるいい地図だ。
小さな駅を通るごとに、その見慣れない駅名を地図に見つけ、あ、いまここまで来た、この先湖があるぞ、などと言いながら電車に揺られるのは実にのんびりしていて、楽しい。
思えば今日で日本を発ってから6日目。
仕事やその他日常などは、もう遠い昔の別世界のことのように思える。
つい一週間前までは、いつもの事務机で仕事をし、スーパーでお惣菜を買って夕食を食べ、風呂に入って布団にもぐりこむ、そんな日常は夢だったのか、それとも今の目の前のことが夢なのか。
飛行機に乗り、海を越えて遠い場所に来て、誰も知らないところでこうして妻と二人だけで電車に乗っているというのは、なんだかとても不思議な出来事のように思えてくる。

こんなことをぼけーっと思うのも、汽車旅ならでは。
慌ただしい旅では、こんなことを思っている暇もないだろう。

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D-LUX3 /ザルツブルク~ハイデルベルク EC内から

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コメント

長期の旅行は、日常を忘れられるのがまたいいのかも。
そう思いました。

フランスなんかでは、ビジネスマンでも夏休みが1ヶ月あったりとか、ヨーロッパはそういうところ、いいですよね。

日本だと、不況なら当然働かされるし、好景気ならその分がんばって働け、というわけで、どうにも理不尽な気がしますが。
その辺りが団塊の世代の「喪失」にもつながっていくような。

堅い話で申し訳ない。

投稿: お腹 | 2010/01/26 22:12

お腹さんこんばんは。
すっかり返信が遅くなってしまって失礼しました。
向こうのバカンスには憧れますよね~。
でも自分だったら仕事とか日常に戻るのが嫌になってしまうかも…。
日常から脱したら、また日常に戻らなければ、
日常から脱する旅行の意味がなくなってしまいますもんね。
適度な日常、適度な非日常がいいよね、ってとこでしょうか。

投稿: brix | 2010/02/07 21:30

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