ちいさな一人旅(後編)
村上駅で慌てて電車に乗り、さっき乗ってきた線路を新発田駅まで引き返す。
村上で昼食を取り損ねた僕は、新発田駅で昼食を買わなければならない。
駅のコンビニではおにぎりは売り切れ。仕方なく簡単に食べられそうなパンとチョコレートを買い、発車待ちの車両の中で昼食となす。

次の津川で1時間ほど時間をもてあませば、日帰り一人旅ももう終わる。
そう思うと少しさびしくなってくるが、津川までの磐越西線も、実は初めて乗る区間だ。
阿賀野川沿いをさかのぼる、とてもきれいな路線だ。 線路に沿って走る国道49号線は例によって何度も通っているのだが、線路は初めて。
諸行無常なのだ。
赤い橋が見えてくると、津川に到着する。
津川の街は阿賀野川をはさんで駅の対岸にあるので、街へ行くにはあの赤い橋を渡らなければならない。
車では何度も知らないうちにわたっている橋だが、徒歩で渡るとなるとなかなか長そうだ。しかも外はとても暑い。
津川駅に着くと、一緒に降りた乗客たちは皆迎えの車に乗り込み、さっと行ってしまった。僕はひとり残され、橋を渡る。
少々足がすくむ。
ここ津川でやることは、街はずれにあるというお菓子屋さんへ行ってお土産を買うことだ。
時刻は15時。暑い。
道路の橋のわずかな日陰をたどりながら、とぼとぼ街を目指す。
いろんなお店を覗きながら地元の人と交流して…、なんてのを想像していたのだが、この炎暑のなか、人はほとんど歩いておらず、お店も開いているのか閉まっているのかよくわからない。
途中で荷物を下ろし、地図をみる。
汗が止まらない。
だいぶ進んだかと思ったが、まだ半分くらいだった。
帰りの時間を考えると、時間的余裕も多くはない。
中に入ると涼しいが、僕の汗は止まらず、疲れた声でお勧めのお菓子なんかを聞いたものだから、お店の人は何者かと思ったかもしれない。
帰りの列車時刻を聞いて、さりげなく旅人であることをアピールしておく。
本懐を遂げた僕は、今来た道を引き返し、駅を目指す。
帰り道は早く感じられ、時間にも余裕ができ、シャッターを切る頻度も行きよりも増えた。
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