2010/02/07

恋を抱きしめよう

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ずっと実家でほったらかしにされていたギターのエフェクター。
VOX V810というオーバードライブだ。
今回実家から取り寄せて、何年かぶりに使ってみる。
保証書を見ると、平成10年12月の購入。
大学1年の頃。もう10年も昔のことだ。
当時やっていた、WEEZERのコピーバンドで使う必要があって、ベース用として買ったのだった。
ギターのエフェクターと言えばBOSS辺りが定番だが、それはみんな持っているし、ビートルズ好きの僕としては、60年代を思わせるクラシカルな外観のこれを迷わず選んだ。
「VALVE TONE」という名前もいかにもいい音がしそうじゃないか。
中国製だが、金属製の外装は冷たく頑丈。
文字も彫り文字で、今見ても実によくできている。
試しにへフナーに繋いでみたら、案の定ハウリングしまくってとても使えたもんじゃなかったけれど、ジャズベースに繋いで、WEEZERのみならず椎名林檎のコピバンでも活躍した。

確かフットスイッチの調子が悪くなって、いつか直さなきゃと思いつつそのままだったが、今回新しい電池を入れてみてリッケンバッカーに繋いでみると、全く問題なく作動した。やった!
音は、ブラックナイロンのルーズなテンションと相まって、実にブリブリ。
こりゃあいい。
次にギターをば。
最近の歪みに比べれば、ずっと大人しい歪みなのかもしれないけど、そこがいい。
イメージ的にはでっかいアンプを大きな音で鳴らした時の歪みのような…。
とはいいつつ、これはあくまでイメージであって、ほんとのところ、他のオーバードライブと比べた訳でもないのでいい音なのかどうかもよくわからないけれど、いい。
コードをパコパコ鳴らすだけで自分がうまくなったように錯覚してしまう。
もっと早く使ってあげていればよかった。
エフェクターはこれしかもっていないけれど、これだけで十分だ。

さて、これはスティービーワンダーの「恋を抱きしめよう」のカバー。
オリジナルはビートルズ。
ビートルズの曲で何が一番好きか?
ビートルズ好きならみんなが困るこの問いに対し、僕も勿論その時の気分によって変わるのだけれど、迷った時にはこの曲を挙げておけばOK、というくらい好きな曲だ。
邦題の意味は今もよくわからないけれど、ポールらしい明るく前向きな感じがとてもいい。
で、このカバーバージョン。
キーを半音上げるだけでこんなにも雰囲気が変わるのか!とびっくり。
スティービーワンダーはこれまで聞いてみようと思ったことはなかったけれど、これはオリジナルに勝るとも劣らない名カバーだ。
バックのクラビコード?らしき音がファンキーでカッコいい!
すっかり楽しくなって、今日はこればかり飽きずに何度も何度もギターでパコパコ弾いているうちに、夜になってしまった。

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2010/01/25

独逸阿房列車 本編5(前半)

平成21年9月22日。

さわやかな晴れた朝、ザルツブルク中央駅へ向かう。
今日は比較的長距離を移動しなければならない。
この後、ミュンヘンを経由し、フランクフルトの南方にあるハイデルベルクを目指す。
移動距離はおおよそ500km程だろうか。

移動手段は相変わらず鉄道だが、また来るときと同じように、またRailjetやICEを乗り継いで行くのは、速く快適ではあるが、面白みに欠ける。
ここはあえて、ザルツブルクからハイデルベルクまで、乗り換えなしでECに乗ろうと思う。
ECとはEurocityの略で、国際長距離列車などと呼ばれる。
ICEを新幹線とするならば、ECは在来線の特急といった風情(速度はもっと速いが)で、車両もICEに比べるとどこか垢抜けない。
だが、それがいいのだ。
長距離を移動するならば、「のぞみ」よりも「白鳥」に乗りたいではないか。
まぁ、この辺の例えはわかってもらえる人だけにわかってもらうとして、とにかくECに乗るのだ。
実は既に座席指定券をニュルンベルクで買ってある。

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万事予定なしを旨とする独逸阿房列車ではあるが、比較的長距離で、ここは座れないと辛いな、という区間はやむを得ず指定券をとる。
百閒先生もふと特別急行に乗ろうとして空席がなく、東京駅でよく駄々をこねていたようだが、僕はその辺りに関しては用意がいいのだ。
それらしき列車がホームに入ってきて乗り込む。
車内はこれまでのICEなどに比べると古臭く、座席も布張りである。
ICEであれば電光掲示されているはずの指定席サインもなく、日本の車両のように座席番号が貼り付けられているのみである。
しかもその番号が二種類貼ってあり、微妙にずれた座席番号を示している。
車内は空いていて、席を間違ったところで問題はなさそうだが、それでは落ち着かないので、近くにいたビジネスマン風の青年に指定券を見せながら訊いてみる。
「この列車でよいか、この座席でよいか」
「よい。正しい列車に乗っている。窓に貼られた番号は誤りであり、古いものである。上部に示された番号が正しい番号である」
「あなたに感謝する」

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D-LUX3 /ザルツブルク~ハイデルベルク EC内から

車内は空いているし、暖かい。
車内での時間はたっぷりあるし、だいぶ気持ちに余裕も出てきた。
フランクフルトの本屋で買っておいた鉄道地図をバッグから取り出す。
小さな駅名まで書かれた地図で、地形もよくわかる。
ドイツの国土を俯瞰でき、今自分たちがどのあたりを移動しているのかがよくわかるいい地図だ。
小さな駅を通るごとに、その見慣れない駅名を地図に見つけ、あ、いまここまで来た、この先湖があるぞ、などと言いながら電車に揺られるのは実にのんびりしていて、楽しい。
思えば今日で日本を発ってから6日目。
仕事やその他日常などは、もう遠い昔の別世界のことのように思える。
つい一週間前までは、いつもの事務机で仕事をし、スーパーでお惣菜を買って夕食を食べ、風呂に入って布団にもぐりこむ、そんな日常は夢だったのか、それとも今の目の前のことが夢なのか。
飛行機に乗り、海を越えて遠い場所に来て、誰も知らないところでこうして妻と二人だけで電車に乗っているというのは、なんだかとても不思議な出来事のように思えてくる。

こんなことをぼけーっと思うのも、汽車旅ならでは。
慌ただしい旅では、こんなことを思っている暇もないだろう。

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D-LUX3 /ザルツブルク~ハイデルベルク EC内から

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2010/01/19

独逸阿房列車 本編4

平成21年9月21日。

この日は移動なしで、一日ザルツブルクを観光する。
昨日と同じように橋を渡って川を越え、旧市街を目指す。
この辺りはなんとか「ガッセ」がやたらと多く、そこらじゅうにガッセ、ガッセと書いたプレートが建物の壁についている。
「ガッセ」とは小路の意味らしい。
ちなみに、ザルツブルクの名所として有名なモーツァルトの生家はゲトライガッセという小路に面しているが、我々は特に興味ないので当然のようにスルー。

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M6 /Planar T*50mmF2 /Kodak Gold100 /ザルツブルク市街

市街に着いたのは10時くらいで特に朝早いというわけでもなかったが、まだ観光客もそれほど多くなく、開店の準備をしている店もあり、さわやかな朝の街を歩くことができた。
土産物屋を開ける準備をしているおばあさんに挨拶をすると、小路の説明をしてくれた。
ここはとてもとても古い街であること、自分はずっと昔からここに住んでいること。
声高にそれをしゃべるでもなく、静かに独り言のように、本当に我々に向けてしゃべっているのかな、といったような話し方だったが、自分の住んでいるこの古い街に愛着と誇りを持っていることは明らかだった。

今日はぶらぶら散歩しているだけではなく、目的地がある。
ホーエンザルツブルク城という、まあザルツブルクに来れば必ず訪れると思われる、市街を見下ろす古城だ。
それは丘の上にあり、市街のどこからでも眺められるが、入り組んだ市街をやみくもに歩いてもなかなか近づいている気配がない。
広場に出て、案内図を見つける。
北はどっちだ、現在地はどこだと眺めていると、後ろから「エンシューディゴン」と声がした。
「エンシューディゴン」とは日本語でいうところの「すみません」で、それこそ「すみません」と同じように、謝罪や声をかける時など、日常多用されるそうだ。
振り向けばおばさんが立っている。
おお、ほんとにエンシューディゴンって言うんだ!と変な感心をしていると、
「その自転車私のなの、ちょっと失礼するわ」とのこと。
優しそうなおばさんだ。
一瞬躊躇ったが、とっさに、城に行きたい、ここはどこか、と尋ねてみる。
城への行き方は、まあ判ったような判らなかったような。
ついでにちょっと話してみると、おばさんはお母さんが日本に行ったことがあること、自分は日本へは行ったことがないが、ぜひ行ってみたいということを話してくれた。礼を言って別れる。

城のふもとにたどり着くと、そこからは結構丘を登らなければならない。
便利なケーブルカーもあるが、乗り場は混雑している。
若い我々は細い小径を歩いて登ることに。

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M6 /Planar T*50mmF2 /Kodak Gold100 /ホーエンザルツブルク城内

ホーエンザルツブルク城はいかにもヨーロッパの中世の城、といったイメージで、城門をいくつかくぐりながらどんどん登ってゆくと、息切れがしてくる。
今日は暑いくらいの天気だ。
中は多くの城がそうであるように博物館になっていて、その一角には中世ヨーロッパらしく、さまざまな拷問器具も展示してある。
棘棘のついた椅子や、車輪、拘束具、ほかにもあんなものやこんなものまで…。
展示してあるのを見るからには、その使い方に思いを馳せざるをえないのだが、一見何に使うの?といった物も、個人的な興味からよく知っていたので、実際に目にするとザワザワしてくる。おっかない。
外人たちも様々な表情でこれらを眺めている。
日本とて中世においては例外ではないのだが、僕はどうしてもヨーロッパというと、現在の洗練された美しい街並みの陰に存在した、こういった血なまぐさく、湿った暗い一面を意識せずにはいられない。

城から再び徒歩で下り、ふもとのお店で昼食をとる。小さなオープンテラスのお店だ。
料理の名前は忘れたが、でかいソーセージと、芋と、ビール。
少々の疲れと、暑さと、高揚した気分とで、やや酔いが回る。
午後は再び市街をぶらぶら散歩。
ちょっとだけお土産を買ったり、街角での演奏を聴いたり、ベンチに座って休んだり。
同じような街並みをぐるぐる回っているだけだが、飽きることはない。
目に見えるものはなんでも初めて見るものだし、僕はそれらを気持ちよく写すことができるカメラを手にしているのだ。
いつまでだってこうしていられる。

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M6 /Planar T*50mmF2 /Kodak Gold100 /ザルツブルク市街

さすがに陽が傾いてくる頃には疲れが出てきた。
今日の夕食は、レストラン。
一度、オープンカフェのようなところに決めかけたのだが、メニューには写真も英語表記もなく、まっっったくそれが食べ物なのか飲み物なのか何なのか、魚なのか肉なのか野菜なのか判らなかったので、こっそり逃げ出し、「日本語メニューあります」と玄関に表示してあるお店に入った。
しかし僕は緊張し、「どの(言葉の)メニューを持ってくるか?」と聞かれたときに、ついうっかり「英語の」と言ってしまい、妻は唖然としていた。
僕としては、さっきのドイツ語のメニューが頭にあり、それから逃れたい一心でつい「英語の」と言ってしまったが、ああそうだ…ここには日本語のメニューもあったのだ。
料理の名前は忘れたが、ここではものすごい量のカツやら芋やらを食べた。もちろんビールも。

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M6 /Planar T*50mmF2 /Kodak Gold100 /ザルツブルク市街

夕暮れ迫る街ではでかいクルマらに囲まれながら、負けじと可愛いチンクが走っていた。

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