2014/08/22

ちいさな一人旅(後編)

村上駅で慌てて電車に乗り、さっき乗ってきた線路を新発田駅まで引き返す。
村上で昼食を取り損ねた僕は、新発田駅で昼食を買わなければならない。
駅のコンビニではおにぎりは売り切れ。仕方なく簡単に食べられそうなパンとチョコレートを買い、発車待ちの車両の中で昼食となす。

新発田からは新津まで30分ほど。この区間は初めて乗る。
新津ではわずか1分の乗り換え時間だが、次の列車は同じホームで僕を待っており、難なく乗り換えることができた。
車では何度も来た町も、車窓からはまた違って見える。

L1220752_800_2

ディーゼルの車内は空いており、のんびり揺られる。
次の津川で1時間ほど時間をもてあませば、日帰り一人旅ももう終わる。
そう思うと少しさびしくなってくるが、津川までの磐越西線も、実は初めて乗る区間だ。
阿賀野川沿いをさかのぼる、とてもきれいな路線だ。

L1220780_800

線路に沿って走る国道49号線は例によって何度も通っているのだが、線路は初めて。
電車好きだった子どもの頃の僕には叱られそうだが、いつからか電車に乗って遠くへ行くことはなかなか気合いのいるものになっていた。
新発田駅や坂町駅と同じように、僕も変わったのだろう。
諸行無常なのだ。

L1220796_800

赤い橋が見えてくると、津川に到着する。
津川の街は阿賀野川をはさんで駅の対岸にあるので、街へ行くにはあの赤い橋を渡らなければならない。
車では何度も知らないうちにわたっている橋だが、徒歩で渡るとなるとなかなか長そうだ。しかも外はとても暑い。
津川駅に着くと、一緒に降りた乗客たちは皆迎えの車に乗り込み、さっと行ってしまった。僕はひとり残され、橋を渡る。

L1220805_800

橋からの眺めはきれいだが、川を見下ろすと何かを落としそうで怖い。
少々足がすくむ。
ここ津川でやることは、街はずれにあるというお菓子屋さんへ行ってお土産を買うことだ。

時刻は15時。暑い。
道路の橋のわずかな日陰をたどりながら、とぼとぼ街を目指す。
いろんなお店を覗きながら地元の人と交流して…、なんてのを想像していたのだが、この炎暑のなか、人はほとんど歩いておらず、お店も開いているのか閉まっているのかよくわからない。
途中で荷物を下ろし、地図をみる。
汗が止まらない。
だいぶ進んだかと思ったが、まだ半分くらいだった。
帰りの時間を考えると、時間的余裕も多くはない。

しばらく無心で歩くと、件のお菓子屋さんが見えてきた。
中に入ると涼しいが、僕の汗は止まらず、疲れた声でお勧めのお菓子なんかを聞いたものだから、お店の人は何者かと思ったかもしれない。
帰りの列車時刻を聞いて、さりげなく旅人であることをアピールしておく。
本懐を遂げた僕は、今来た道を引き返し、駅を目指す。
帰り道は早く感じられ、時間にも余裕ができ、シャッターを切る頻度も行きよりも増えた。
駅に着くとまたしても汗がどっと流れ、自販機でかったファンタグレープを一気に飲み干す。

L1220818_800

帰りの列車は会津若松発の新津行き。
冷えた車内が心地よい。
新津で乗り換え、新潟着は17時半くらい。
ちょうど出勤の時間に家を出て、就業時刻頃に新潟へ戻ってきたことになる。
実に手ごろで、旅気分を満喫できるプランであり、このプランを考えた僕はなかなか気が利いている。

結局リュックに入れていった「ちいさな城下町」は一度も開かずにただの荷物になった。
けれどもこの本は、こうして僕を何年かぶりの鉄道による一人旅に導いた。
きっと僕の大事な一冊になるのだろう。

| | コメント (2)

2014/08/18

ちいさな一人旅(前篇)

久しぶりに書いてみようと思う。

安西水丸の「ちいさな城下町」という本を読んだ。
一見どうということもない、地味な城下町を、どうということもなくめぐる本だ。

ところで、僕には「お盆休み」というものはなく、夏季に5日間の休みが与えられる。
先週はずっと出勤し、今日と明日を休みに充てたので、暇ができた。
妻は仕事でいない。
お盆休みも開けた平日に、ぽっかりできたひとりの休日、思い立ってひとりで電車に乗って出かけてみた。

今朝、天気予報を入念にチェックすると、午前は雨から次第に曇りになるとの予報。
日差しも強すぎず、気温も暑すぎず、明日も休日という心の余裕、出かけるのはやはり今日しかない。
いつもの出勤時刻とほぼ同じ頃、家を出る。
久しぶりにフィルムのライカも持ち出した。

雨の中を走るバスに、連休明けのためか、元気ない顔が停留所ごとに乗り込んでくる。
新潟駅に着き、自販機で「えちごワンデーパス」というエリア限定の鈍行フリー切符を買う。
新潟駅は現在大改修中で、目的の8番線があらぬところに移動している。
大量の通勤、通学客に逆行し、村上行きに乗り込む。
皆は仕事、学校。しかも連休明け。僕は休み、しかも連休中。
乗り込んだ車内は空いていて、窓の外は雨が降り続く。

新発田を通過する。駅前はきれいに整備され、すぐそばには立派な県立病院が建っていた。
子どもの頃、家族でのドライブの途中で新発田駅に立ち寄り、改札の外から駅弁屋さんを呼んで駅弁を買ってもらったことを覚えている。
おそらく「コシヒカリ弁当」とかいう名前の地味な幕の内だったと思うが、お客もおらず、時間が遅かったこともあり、その時の新発田駅はひどく淋しい印象だった。季節は覚えていない。
今は立ち売りの駅弁屋さんの姿はどこにも見えず、昼間眺める今の新発田駅の印象はすっかり変わっていた。
僕と新発田駅とを繋ぐものは、何もなくなった。

L1220728_800

少し陽が差してきた。
平日の閑散とした電車は、淡々と、面白くなさそうに走る。

坂町という駅に着く。
この駅からは米坂線が分岐しており、鉄道で新潟から山形へ帰省する際にはここで進路を変え、米沢へ向かう。
この坂町には、昔構内に転車台とそれに続く扇形機関庫が残っていて、この駅を通るたびに目を凝らしてその姿を確認していた。
新発田駅で駅弁を買った日もここに立ち寄り、写るはずもないカメラを暗がりの中のそれらへ向けていたかもしれない。
今日、それらは跡形もなくなっていた。

10:03村上着。雨は上がっている。
陽が差し、観光客の姿も見え、さあ着いたぞ!と気分も盛り上がる。
村上では約2時間半とってある。我ながらうまいスケジューリングだ。
盛り上がってはみたものの、行くあてはない。

駅前で獅子舞が乱舞している。
お囃子など周辺の人たちは、獅子舞からやや距離をとり、ちんまりとテントの下でやっているので、獅子舞には失礼だが猿回しのようにも見える。

計画通り、やみくもに歩く。
村上といえば町屋なので、町屋の写真を撮り歩く。
昔からのオンボロ町屋、最近建て替えたらしい新築町屋など様々ある。
やはり町屋は格好いい。
やみくもに歩いた結果、遠くに立派な建物が見えてきた。
観光的にありがたい施設に違いないのでそちらに足を向ける。
暑くて汗が流れる。
立派な建物は、民家だった。
おや案内板があるぞと近寄ってみれば、それはごみステーションだった。
しかし、やみくもに歩くことが目的であるため、士気が落ちることもなく、なおもやみくもに歩いた結果、市役所に着いた。

L1220747_800

村上には大学時代に一緒にバンドをやっていた友達が家を建てて住んでいる。
急きょ彼女の新築の家にお邪魔することにして、車で迎えに来てもらった。
久しぶりに会う彼女は、新発田駅や坂町駅とは違って、何も変わっていなかったように見えた。

結局村上では、町屋の写真をぱらぱら撮って、やみくもに歩いて、市役所のロビーで涼んで、友人宅を拝見し、あわてて駅に戻り、終わった。
何もやることのない旅としては、少々詰め込みすぎたくらいだ。

空腹のまま、また鈍行に乗り、次は津川を目指す。

| | コメント (0)

2014/03/24

静かに喜ぶ。

L1210938_800

これまでは家づくり、という掴みどころのない、手に余る大きな布団のようなものを抱えているような気がしていた。
昔のようにこのブリグで詳細にその経過を追っていくような気にもなれなかった。
先の記事にも書いた通り、僕の家づくりはこれ以上なく楽しいものではあったが、本当にイメージ通りのものができるか、でっかい実物大の家ができ、この目ででっかい実物大の「モノ」を確認するまでは不安もあった。
もちろん期待も大きい。
失敗したからといって気軽にやり直しできるものでもない。

盛り上がってブリグではしゃいで、残念な結果だったらどうしよう。

これも先にも書いたが、パートナーである建築会社に不安はない。
これ以上なく良くしてもらっていた。
だが、僕は家を作るのは初めてなので、家づくりにおける成功体験を持っていなかったのだ。
そこで、周囲に悟られぬように、密かに、静かに喜び、興奮し、心配していた。

しかし、僕は、実物大の「モノ」を全身で確認した。

以降、同時進行的な臨場感はなく、後追いにはなるが、ぽつぽつとわが家について書いておきたいな、と思うようになった。
こう思うようになったのが、結果だった。

| | コメント (2)

完成見学会

L1210962_800

この3連休はわが家の完成見学会で、およそ延べ50人ほどの方々に見ていただいた。
みんなどんな家を求めていて、我々の家にどんな感想を持ったのか、それが良いものであればもちろん、全く否定的なものであっても、100人いれば100通りの考えがあるのは当然なので、その100通りに、僕はとても興味がある。
50人の眼には我が家はどのように映っただろう、考えるだけでも楽しい。

家は完成したら終わりではなく、もっと楽しいのは当然これからなのであるが、少なくとも我々は、幸いにも、本当に幸いにも、これ以上ない最高のパートナーの協力を得ることができ、これ以上ない最高に楽しい家づくりができたと確信している。...

初日の完成検査の日、朝いちに電動ドリルを持ち込んで壁に穴を開けはじめるような前代未聞の施主に、楽しげに付き合ってくれた担当の皆さんにとても感謝している。
この場のほかにもいろんな場を借りて、今後も言えるだけお礼を言うことにしよう。

土間はまだ養生中で、クルマを入れることはできない。
ですので、画像はイメージであり実際とは異なりますのでご注意ください。

| | コメント (0)

2014/03/20

いよいよ完成も近い。

L1210602jpgb_640_2

明日はいよいよわが家の完成検査。そして3連休の完成見学会へと続く。
昨日の段階では、玄関戸、外壁の腰板、ガレージの扉がまだ付いていなかった。
これらがつくと外観の印象がぐっと変わるはず。
付いたところをいち早く見てみたい!

仕事帰り、その楽しみは明日の朝までとっておこうか、帰りがけに見に行ってしまおうか、迷ったが、サッと通ってみることにした。
中では皆さんまだ作業をしている様子。
邪魔になるといけないので寄らずにサッと過ぎ去る。

格子から漏れる黄色い明り。
ものすごくいい雰囲気じゃないか!
もっと眺めていたかったが、もったいないのでサッと過ぎ去る。

いよいよ明日は完成検査。
完成なのである。

| | コメント (0)

2014/02/27

家ができそうになる。

ところで家ができそうである。
昨年12月の頭頃から基礎を作り始めて以来およそ3か月、家ができそうである。

L1210166b_640

壁ができ、窓が入り、屋根には瓦がのった。
完成はなによりも楽しみであるが、いろんな迷いや決断や、設計士さん達との打ち合わせなど、そういった家づくりに関わる諸々のことが続くのもあと1か月と思うと、さびしい気持ちもある。
もちろん家は作って終わりではないが、そのくらいこの家づくりは楽しく充実したものとなっていた。
家づくりを楽しめた要因の一つは、幸いにも我々にあった建築業者さんと出会えたことである。
どこがいいのかは、よくわからない。
すべてにおいて最良の業者さんかといえば、それも良くわからない。
とにかく、確信を持って言えることは、我々にとってとてもあっている、ということだけである。

大体2週に1度、我々夫婦と、設計士さんと営業担当的なポジションの社長の娘さんとの4人とで打ち合わせをやってきた。
設計士さんと理想の家づくりを長々語り合った訳でもない。
どれだけその業者さんが素晴らしい家を建てるのか、長々説明された訳でもない。
雑談したり、ちょっとは真面目な話もしたり、少しはお金の話もしたり、家という人生最大の買い物の計画ではあるが、日常の延長上に自然とやってきた。
特にリキむこともなく、かといって惰性で進めることもなく。

思ったほど気負いもなかったような気がする。
最初こそ絶対にいい家を建ててやる!後悔はしないぞ、と図面と始終にらめっこ、ということもあるかもなと思ったけれど、そうでもなかった。
自分でも意外なほど、淡々としていた。
我々が住みたい家のイメージは、がんばって考えなくとも、いつの間にか我々のなかに醸成されていた。
それを過不足なく相手に伝えるだけだった。

L1210161b_640

そうして淡々と、家ができてきた。
淡々とはしているが、感動がないのとはもちろん違う。
適当な例えを見つけられないので、語弊を恐れずにあくまで語感で、ということであれば、「無血革命」といった感じか。
あくまでもこれはイメージであり、実際とは異なります。

| | コメント (4)

2014/02/23

買っちゃった iPad。

L1210266_640

この手のモノはもう買うことがないだろうとすら思っていたのだが、あっさり買ってしまったiPad。
僕には必要ないなーと思いながら指先でiPhoneを操る人々を眺めていたのだが。

買った目的は2台目のPCとして。

現在のメインのパソコンは、4年半前に買ったデスクトップ。
メインというかこれ1台のみだが、何の不自由もない。
ただ、最近妻がPCで仕事っぽいことをする時間が少しずつ増えてきたのと、家を作るにあたって、もうひとつくらいPCがあってもいいかなと思ったことから、どんなのがいいか考えていた。
ちょっと前なら2台目は迷わずノートPCを買っていただろうが、今はタブレットなるものがあるらしいという噂を聞きつけ、ちょっと調べてみる。

僕の使い方はほとんどネットと音楽。
楽器をやるときに音楽を鳴らしながら、ネットでスコアやコードを調べたり、とまあそんなくらいだ。
凝った写真の加工をするでもなく、難しい計算をする訳でもなければ、外に携帯することもまずない。

そんな訳で当初は画面の大きな端末ならなんでもいいやと思っていたのだが、ちょっとよく調べてみると、アップルの「Garage Band」なるソフト、いやアプリケーションがかなり素晴らしいらしい。
インターフェースを買ってギターをつなげば、アンプシミュレーターにもなるらしい!
数百円のアプリを買えば、フェンダーのあのアンプ、マーシャルのこのアンプ、ヴォックスのそのアンプの音が自分のものに…。
PODとかなくても…すごいじゃないか!
もう夢が広がっちゃった僕は、正直PCとしてよりも、楽器を買う感覚で即決してしまったのであった。

本当に久々にこういうモノを買ったけれど、その何でもできる感は怖くなるほど。
そして、実際のところ何ができるのか分からない感も、怖くなるほど。

まあ僕はネットも見れるアンプシミュレーターとして買ったんだから、あれこれできなくても、まあいいのだ。

| | コメント (3)

2014/01/13

Happy New Epiphone! Vol.2

年末にお迎えしたEpiphone Wilshire 1962 Reissue
これの付属品がなかなか凝っていて面白い。
もちろん最近のギブソンのヒストリック・コレクションではお馴染みなんだろうけど、僕は何せヒスコレなんて買うの初めてで、最初で最後だろうから、はしゃいでいるのである。

L1200887_800

まずはグレーのEpiphoneロゴ入りハードケース。
グレーなのが'60sぽいし、内装のブルーもシックだ。TKL製。
外観はリッケンバッカーのケースに似ている。

そして細々とした付属品。
写真の左の方から、なぜかTシャツ、シリアル入り認定証、ピック5枚。
ピックはちょうどいい形と硬さなんだけど、使うのがもったいなくて未使用。
真ん中左上は、当時のを再現したタグ。これはカッコいいので額にでも入れたいくらい。
他は現在のギブソンの保証書など。
右のはストラップとカールコード。
ストラップは柔らかい革製で使いやすそうだけど、使っていないストラップがあるので未使用。
カールコードは確かに'60sぽくていいんだけれど、、、、短い!
アンプから1mも離れられなさそうではないか!
まあカールコードも前に買ったVOXのやつがあるので、未使用。

結局どれもこれもケースにしまったままになるのだけど、付属品だけでも結構楽しめる、ウィルシャーさんなのである。



これは海外の楽器屋の上手な人のデモ。うまい人が弾くとこんな音が出るそうです。

| | コメント (2)

2014/01/05

Happy New Epiphone!

確かに僕は2009年1月に物欲がない宣言をしている。
でも、たまに欲しいものも出てくるわけで、昨年末に新しいギターを買ったのである。

明けましておめでとうございます。
細々と続けている、本ブリグです。

L1200872_800

エピフォン・ウィルシャー。
2009年にギブソンからリイシューされたやつである。
この地味でマイナーなギターがリイシューされたことは当時から知っていたが、自分が買うものとは全く思っていなかった(主に価格的な理由で…)。
それが今回、手の届きそうな価格で投げ売られていたので、妻との慎重な交渉の末、入手に成功したのである。まことにおめでたい。

さてこのギター、マホガニーのボディにP-90の組み合わせという、レスポール・スペシャルのようなスペックなんだけど、洗練されたレスポールやSGに比べると、なんともクニャクニャとした形で、垢抜けない。
でもそこがいかにもエピフォンらしく、たまらない。
トラディショナルなフルアコやセミアコだと貫禄のエピフォン!なのだが、ことソリッドとなると、途端にビザールっぽくなるところがなんともお茶目なエピフォンである。

L1200870_800_3

1962年のリイシューなので、ヘッドはファットヘッド。
ポール・マッカートニーのカジノのヘッドでおなじみのスタイルだ。
Epiphoneのロゴはもう少し細くて繊細な感じだともっと雰囲気が出るのだけれど…。
ナットは幅広で、ネックのグリップも握り応えのある、丸太!という感じ。

L1200867_800

このちっこくて変な形のギター。
もうかわいくて仕方がない。
僕も早くうまくなって、爆音で掻き鳴らしてやるからな!

| | コメント (3)

2013/11/24

住みたい家。

L1200739_800

これまで家づくりを計画してきて、段階に沿っていろいろ検討を重ねてきた。
ざっくり言って、まずは間取り、次に設備、そして内外の仕上げ。
ここまで約10カ月。いろいろ考えてきたが、一番迷い、考えたのが、外観を含む全体の雰囲気。
自分の住む家を建てる以上、やっぱりカッコいい家に住みたいものである。
でも、カッコいい家とはどんな家なのだろうか。
人並みに、書店で建築雑誌や地域の実例集なんかをひと通り眺めてみる。
おしゃれな家々が次々出てくる。

スタイリッシュモダンな家。
箱のようなすっきりとしたデザインがスタイリッシュでモダン。
触れれば切れそうに直線的なデザインで、内装もシュッとした色遣いで、ダイニングなんかはもうバーみたいな感じなんですよね?
水道の蛇口とか、ドイツ製だったりするんですよね?
施主支給!なんて言って。
でも残念ながら、僕はそんなにスタイリッシュでモダンな人間ではありません。

南欧風。
なんとなく白壁で、レンガ色の瓦が乗ってて、アーチなんかもついてて、屋根の下あたりには鉄製のぐにゃぐにゃっとした飾りがついていたりするんですよね?
シャビーな雰囲気を出したり、ドアにはステンドグラスをはめ込んだりして。
でも残念ながら、僕は南欧に行ったことがないので、南欧がどこのことを指すのか、南欧風がなんなのかも知りません。

数寄屋風。
デーンと門が構えてて、デーンと鬼瓦が乗っていて、壁は黄土色やくすんだウグイス色なんですよね?
頑固な爺ちゃんなんかも標準装備で、お嫁さんとけんかしたりするんですよね?
でも残念ながら、僕はお茶を嗜みませんし、うちの土地は狭く、僕の爺ちゃんもいません。

その他白っぽくて背が高い家。
屋根は片流れで、半分3階建てでスペースを有効活用できて、家事に育児に大忙しなパパやママ大助かりの家なんですよね?
パパのための2畳くらいの書斎や、ママのためのパソコンスペース、親子で勉強できる机が廊下にあったりするんですよね?
白っぽいから、なんかおしゃれげですよね。
コストもそこそこ、住みやすさ満点、いいですよね。

とにかく、どの家も「おしゃれ」だ。
雑誌に乗るようなお家だから当然なのかもしれないが、どれも「おしゃれ」で住みやすい「理想」の家だ。
だが残念なことに、どの家も自分たちが住むことをイメージできない。
自分たちがそこに住んで、最も違和感がなく、落ち着く雰囲気をよーく思い描いてみる。

僕も妻も、ものごころついたときから日本人なので、やっぱり和風だ。
それも数寄屋風とか豪勢なやつじゃなくて、町家のような庶民の家。
我々はこれまで、各地の城下町や宿場町を訪れて、そこにある街並みや建物に大いに親しみを持つようになった。
そして、それらの建物のディティールが持つ背景や歴史。
我々が南欧風に住む理由はひとつも見つけられないが、こういった家に住む理由、住みたいと思う理由は、ありそうだ。

| | コメント (0)

2013/11/18

ポール以前、マッカートニー以後

1475958_542744849140703_175143758_2

ポール・マッカートニーが日本へ来るというので、当然見に行った。
当然とは言うものの、見に行くにはチケットが必要で、そのチケットは抽選だった。
はじめは東京公演に応募した。
厳正なる抽選の結果、「残念ながらチケットをご用意することはできませんでした」というメールが来た。
まあ仕方がない。
次に最終先行予約というやつで、もう一度東京公演に応募した。
再度前回と同じ内容のメールが来た。
残念だが仕方がない。ネット上ではファンのブログなどで当選の報告が見られるようになった。
もともと、前回日本に来た時には、実際に見に行ける人は極限られた人で、自分がそのなかに入るという現実感というものが全くなかった。
今回もたまたま応募しただけで、実際に行けるという期待感は、宝くじを買うのと似て、薄かった。

999632_542745092474012_346103031_n

その後、大阪公演も決まったという。
応募するのは簡単なのでこちらも応募した。
結果は同様。
さすがに3度目となると悔しい。
就職の選考に漏れたときにも何度となく受け取ったが、この落選のお知らせというものは、当事者の切迫感と比べてあまりにも温度差があり、何とも冷たい。
まあ、この手のお知らせは事実のみを伝えれば用は足りるのであって、変に温かい文体でも不自然ではあるのだが。
ただ、こちらも悔しいとなると、チケットを手にした人に対して嫉妬心も生まれてくる。
しかし、もし本当に手に入れたいのであれば、方法は他にもたくさんある。
エクストラの料金を払い、チケットと宿泊がセットになったツアーも用意されている。
日々のこまめな情報収集を行い、他のプレイガイド、ポール公式HPなどから応募する方法を探すこともできたはずだ。
ファンクラブに入り、そっち経由の方法もあるだろう。
要は、僕の努力が足りなかったというだけだ。

そんななか、一緒に応募していた友人が大阪公演に当たった。
これはもう、幸運というほかなかった。
こうして、僕が14歳の時にビートルズと出会い、好きになって以来20年目という節目に、ありがたいことに、本当に幸運なことに、ポール・マッカートニーを実際に体感できることになった。

1458664_542745139140674_572304920_n

「百聞は一見に如かず」
「聞」ということに関しては、この20年間、ほとんど毎日彼の声は耳に入れてきたはずである。
毎日というのが大袈裟なら、5日に4日は聞いている。
すると、365日×20年×4/5=5,840日は聞いている計算になる。
「見」ということに関しても、今でこそYouTubeという信じられないほど便利なものがあるが、昔はビデオに撮ったなんかの特番やライブの同じ場面を、何度も何度も繰り返し見たものだ。

しかし、過去の自分には誠に申し訳ないが、実際に「体感」するのは、「百聞」も「一見」も遥かに超えていた。
S席とは言えステージは遥かに遠かった。
肉眼ではポールの表情を読み取ることはできない。
だが、それでもポールは同じ会場にいて歌い、ヘフナー・500/1ベースを、ギブソン・レスポールを、エピフォン・カジノを弾き、我々に向かって語りかけたのだ。

1465388_542745082474013_1315498592_

世界中に無数にいる一ファンのありがちな思いに過ぎないが、この体験は自分の人生のなかの大きな画期のひとつであり、あまりにも幸福な時間のひとつであることは間違いなく、平成25年11月12日を境に、それ以後の僕は、「ポール後」の僕になってしまったのである。

| | コメント (2)

2013/11/10

ポール・マッカートニー!

Paulmain130713

いよいよポールが来日!
さあさあ、明後日は大阪だ!!
日常の様々に埋もれて実感がないまま、まだ先だと思っていたその日はもうすぐそこに。
もし直接会ってしまったらどうしようと、いらぬ心配。
(その時のために、一応ヘフナーのピックガードは隠し持っていく)

これまでいくつもの場面で僕を変え、僕をひっぱってきたビートルズ。
その一員であった彼を、ついに直接見て、聴いて、体感する12日夜を境に、確実に僕はまた変わるだろう。

| | コメント (3)

地鎮祭

1459217_537004006381454_813297394_n

先週はようやくうちの地鎮祭。
土地の造成が先月末で完了し、決済も済ませ、いよいよ僕のものになったのだ。
僕のものになったとはいえ、ローンやら何やらあり、額もこれまでになく大きいので、そのような実感には乏しい。
とにかく工務店との契約後、ずっと土地の造成完了を待っていたので、やっとここまで来たかという思いである。
もう明日にでも建ててもらいたいところだが、物事には順序というものがあるのだ。

当日は前夜からずっと激しい雨。
神様たちが荒ぶれている。
神主さんが出前のような箱からいろいろ出して、手際良く祭壇の支度を進めていく。
この神主さん、この工務店では毎度おなじみな人で、工務店のHPの地鎮祭の記事にも幾度となく登場していて顔を知っているので、初めて会った気がしない。
地鎮祭は滞りなく済み、神主さんは準備以上の手際の良さであっという間に祭壇を撤収し、去って行った。
その後、設計士さん達と風呂とトイレのショールームへ。
既に決めていたものの現物確認に過ぎないので、風呂の壁の色を決め、トイレの色を決めて、完了。
いたって簡単なものである。

さあ、これからいよいよ家が建っていく。

| | コメント (0)

2013/09/08

土地を決めるまで。

家を建てるにあたり、最初に悩んだ土地探し。
しかし結局のところ、施工業者を決めたのと同様に、決断するのも思いのほか早かった。
近所の新興住宅地に、条件の良い区画が数か所残っているのを不動産屋に教えてもらい、一晩考え、そこに決め、予約金を支払った。

初任地の上越市内ののどかな土地がいいなあと思ったこともあった。
新潟市内でも、多少不便でも古くからの街並みのなかに住みたいと考えたこともあった。
結果的に、我々は今住んでいるところから歩いて数分の場所に決めた。
生活圏が変わらないということは大きな安心だし、通勤にも便利な場所である。
市内のどこへ向かうにもよい場所だし、不足するインフラはなにもない。
要するに、便利な場所なのだ。

便利さは、物事を選択する尺度のひとつとして無視できないが、それまでだ。
この土地も便利であることはありがたいが、勿論そればかりではなく、タイミングやいろんな要素が絡んで、こうなった。
いろんな要素が絡んでいるように見えるが、この土地を知り、考えたのは一晩だけなので、実際あっけない。

とにかく、この先ずっと住む場所を、こうして決めた。
決めた以上、ここに自分たちにとって満足のいく家を建て、自分たちにとって満足のいく日々を送っていくのだ。
ここで何よりも大事なのは、「自分たちにとって」ということである。

自分たちのことである限り、最優先すべきことは、あくまでも自己中心的に、自分たちにとってどうか、自分たちがどう思うか感じるか、であり、それ以外のことを考慮する必要はない。

| | コメント (0)

2013/09/04

近況というようなもの

前回記事をアップしてからというもの、5ヶ月以上が過ぎた。
こんなにブランクが空いたことは初めてだ。
いつもは「早いもので気づけばもう9月…」というような書き出しにするのだろうが、いつもお決まりではつまらないし、ずっとアップしていなかったことは自分で気づいており、いかにも白々しい。
とにかくなんでもよいから何かそれらしいこと書かなければ、ブリグを再開するきっかけを作れない。
こういう風に、ごちゃごちゃ書いて、なんとなくまた書き始めるのである。

と前置きしたところで、その後のことを思いつくままつらつらと、箇条書きに挙げていく。

・異動があり、仕事が変わった。住所は変わらず。

・春が来て、夏も来て、秋が近づいている。

・どんぐりはアブラムシやアメリカシロヒトリの幼虫に悩まされながらも、元気に伸びている。
今朝は出勤前にアメシロの幼虫を20匹ほど退治した。
間もなく成長を止めるだろうが、春からの今シーズン、伸びれるだけ伸びたという感じで満足だ。

・家はまだ土地の造成が完了せず、未着工。
大体の設計は終え、今後は細かい内装などを詰めてゆく。
竣工は年度末の3月末を予定している。
どうやら本当に自分の家というものが建つらしい。

・昨年ドイツに行ってから1年が経とうとするのに、独逸阿房列車シリーズは未完。
これについては正直に自己申告しておく。

・MINIは壊れず元気に走っている。

・ギターは増えず、減らず、特に上手くもならず。

・カメラは増えず、減らず、特に上手くもならず。
M2は現在修理中。
近々レンズを1本処分し、手元にはズミクロン50/2を1本のみとする予定。

・ブログの画面の一番上に楽天の広告が出るようになった。
楽天以外の広告も出るらしい。
お陰で最近楽天で検索した商品―家につける照明や、涼しくなったので欲しくなったスーツ、サバカレーの缶詰―なんかがぐるぐる回っている。

本ブリグの内容に沿って書くとおおよそ以上になる。
もともとこれといって深い内容を持つブリグではないので、久々の再開のときも楽なのである。
今後、予定通り進めば、秋がしっかりと来て、引き続き冬が来て、さらに春も来て、家ができる。
今後のことを予定通り進めるには、何より元気でいることだ。
と、殊勝に思うのは、ブリグを始めた当時27歳だった僕が34歳になったからではなく、毎日肩コリと腰イタに悩んでいるからでもなく、健康診断を今日、受けたからである。

| | コメント (2)

«MINI12カ月点検